グウェンは目を細めた。彼をじっと見つめ、この変わり者の本性を見極めようとした。
「あなたの親方には一体何があったの?」見逃すまいとばかりに彼女は聞いた。「行方不明になっているって聞いているけど。そしてあなたが何か関係しているとも」
ステッフェンは何度も首を振った。
「いなくなったんですよ」ステッフェンが答えた。「それしか知りません。すみませんが、お役に立てるようなことは何も知らないんですよ」
突然、部屋の向こう側から大きなシューという音が聞こえ、皆振り返って、汚物が落とし樋に落ちて大きな便器の中に音を立てて着地するのを見た。 ステッフェンは振り向くと部屋を横切って便器まで急いで走って行った。脇に立ち、上の階の部屋からの汚物で満たされているのを見ていた。
グウェンがゴドフリーの方を見ると、彼もこちらを見ていた。同じように途方に暮れた顔付きだった。
「何を隠しているにせよ」グウェンは言った。「それを明かすつもりはなさそうだわ」
「牢屋に入れることもできる。」ゴドフリーが言う。「それでしゃべらせることができるかも知れない」
グウェンは首を振った。
「それはないと思う。この男の場合は。明らかに、ひどく怯えているわ。親方と関係があると思う。何かに悩まされているのは明らかだけど、それが父上の死に関係があるとは思えない。私たちの助けになることを何か知っているようだけど、追いつめたら口を閉ざしてしまう気がする。」
「なら、どうしたら良い?」ゴドフリーが聞いた。
グウェンは止まって考えていた。子供のころ、嘘をついたのが見つかった友達のことを思い出していた。両親が本当のことを言うよう詰め寄ったが、本人は決してそうしなかった。自分から進んですべてを明らかにしたのは、誰もが彼女を一人にしてあげるようになった数週間後のことだった。グウェンは同じエネルギーがステッフェンから出ているのを感じ取っていた。彼を追いつめたら頑なになってしまうこと、自分から出てくるスペースが彼に必要なことも。
「時間をあげましょう」グウェンは言った。「そして他を探すのよ。何を見つけられるかやってみて、もっとわかってから彼のところに戻るの。 彼は口を開くと思うわ。まだ準備ができていないだけ」
グウェンは振り返って部屋の向こう側のステッフェンを見た。 大鍋を埋めていく汚物をチェックしている。グウェンは彼が父の暗殺者へと導いてくれるのを確信していた。それがどのようになるかはわからなかった。彼の心の奥底にどのような秘密が潜んでいるのだろうか、と考えた。
不思議な人だわ、グウェンは思った。本当に変わっていた。
第四章
ソアは、目、鼻、口を覆い、辺り一面に注ぎ込む水をまばたきで払いながら、息をしようとしていた。船に滑り込んだ後、やっとの思いで木の手すりをつかみ、水が容赦なく握りしめる手を引き離そうとするのに抗い、必死にしがみついていた。体中の筋肉が震え、あとどれくらい持ちこたえられるかわからなかった。