ソアはへさきに向かって行き、手すりに寄りかかって遠くを見渡した。リースが隣にやって来て、オコナーも反対側に立った。ソアは二人と並んで立ち、島々がどんどん近づいてくるのを見ていた。長いこと黙ったままそうしていた。ソアは湿ったそよ風を満喫しながら体を休めた。
やがて、自分たちがある島を特に目指していることにソアは気づいた。どんどん大きく見えてくる。そこが目的地であることがわかるにつれ、ソアは寒気を覚えた。
「ミスト島、霧の島だ」リースが畏れを持ってそう言った。
ソアは目を見張り、じっくり観察した。その形に焦点が合ってくる。岩が多くごつごつした不毛の土地だ。それぞれの方角に長く細く何マイルも広がって、馬蹄型をしている。岸では大波が砕け、ここからでもその音が聞こえる。そして大岩にぶつかっては巨大な泡状のしぶきを上げていた。大岩の向こうには小さな一握りの土地があり、崖がまっすぐ空に向かってそびえ立っていた。ソアには船が安全に着岸できるかどうかわからなかった。
この場所の奇怪さに加え、赤い霧が島全体に立ち込めて、露が太陽にきらめき、不気味な雰囲気を醸し出していた。ソアはこの場所に非人間的な、この世のものではない何かを感じ取っていた。
「ここは数百万年も前から存在していたらしい。」オコナーが付け加えて言う。「リングより古い。王国よりも古いんだ」
「ドラゴンの地だ」リースの隣にやって来たエルデンが言う。
ソアが見ている間に、突然二番目の太陽が沈んだ。あっという間に太陽が輝く昼間から日暮れ時へと変わり、空は赤紫色に染まった。信じられなかった。これほど太陽が素早い動きを見せるのを見たことがない。この地で、他にも他と異なるものは一体何なのだろうと思った。
「この島にドラゴンが棲んでいるのかい?」ソアが尋ねた。
エルデンが首を振る。
「いや、近くに棲んでいるとは聞いている。赤い霧がドラゴンの息から作られると言われている。隣の島でドラゴンが夜に息をし、それが風で運ばれて日中島を覆うらしい」
ソアは突然物音を聞いた。それは始めは雷のような低いとどろきに聞こえた。長く、大きい音で船が揺れた。シャツの中に居たクローンが頭を引っ込め、哀れっぽい声を出した。
他の者たちは皆くるりと向きを変えた。ソアも振り返り、見渡した。水平線上のどこかに炎の輪郭がかすかに見えるような気がした。沈む太陽を舐めるような炎がやがて黒煙を残して消えた。まるで小さな火山が噴火したかのようだった。
「ドラゴンだ」リースが言った。「僕たちは今、奴の縄張りに入ったんだ」
ソアは息を呑み、考えた。
「どうして僕たちは安全でいられるんだ?」オコナーが聞いた
「どこにいても安全ではない」声が響き渡った。